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【検査値:初級編】新人・ママ病院薬剤師が絶対押さえておきたい血液検査値10選

薬剤師が知っておくべき検査値
押さえておきたい検査値10選
  1. Ccr/eGFR/Scre:腎機能
  2. AST・ALT:肝機能
  3. K:カリウム値
  4. Hgb:ヘモグロビン
  5. WBC:白血球
  6. CRP:炎症反応
  7. PLT:血小板
  8. BUN:尿素窒素
  9. Ca:カルシウム値
  10. INR:アイ・エヌ・アール

病院薬剤師は検査値を勉強しなくてはいけないのは分かるけれど、どこから手をつけたら良いかわからないと思われている方も多いのではないでしょうか。

病院勤務の薬剤師はリアルタイムで検査データを確認します。検査データを見て、患者の状態を把握し、現在服用している内服薬や注射薬と関連がないか考えています。

今回は病院薬剤師歴10年以上の薬剤師が『新人病院薬剤師が最低限知っておきたい検査値』についての解説します。

国家試験レベルなので、簡単で物足りないかも知れませんが、基本こそ重要です。

まずは初級編です!

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Ccr/eGFR/Scre:腎機能の評価

腎機能の指標で代表的なものに、eGFR・Ccrがあります。

薬の投与量を決める上で、重要ですね。腎排泄型の薬は用量や投与間隔に注意が必要です。

Ccrの計算式は知っておくようにしましょう

計算式を見れば、性別・年齢・体重・血清Creによって、Ccrは変化することが分かります。

eGFR(糸球体濾過値)の計算式はこちら

eGFRは、性別・年齢・血清Creによって、左右されます。小柄な高齢者の場合、過大評価されることがあります。こちらは覚える必要はないです。ただし、Ccrと違って体重が考慮されていないことは覚えておきましょう!

腎機能を計算するアプリ計算機を準備しておくと、すぐ計算できて便利です。

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Cre値は低栄養・筋肉量の少ない高齢者ですとCre値が低くなりすぎている場合があるので、0.6で補正する(round up法)があります。詳細はこちらのサイトをご覧下さい。

このround up法に関しては議論されており、勤めている職場の基準を確認した方がいいでしょう。薬によってはeGFRで腎機能を表記していることがありますので、どちらも対応できるようにしておきましょう。

くすりすこ

個人的にはアプリがCcr・eGFRに対応していて、おすすめです。

AST・ALT:肝機能の評価

肝障害における薬物投与量を定量的に補正するための指標はありません。現段階ではChild-Pugh分類を用いることが多い(脳症・腹水・血清Bil・血清Alb・PT時間延長orPT-INRといった項目で点数化:A・B・C)

AST・ALT肝細胞変性や壊死の指標です。高値であれば、肝機能障害を起こしている可能性があります。薬の副作用を確認する上で重要です。

セフトリアキソン注などのセフェム系の抗菌薬・アセトアミノフェンといった薬剤の投与後に異常値になることがあるので、副作用が起きていないか確認する必要がありますね。

K:カリウム値

K値は命に直結する検査値であり、日常的によく目にする検査値です。

K値が低ければ、Kを補充する薬剤が追加されます。

また逆にK値が高ければ、輸液を負荷、K値を下げる薬を服用したり、Ca製剤の投与・重炭酸ナトリウムの投与、GI療法(グルコース・インスリン)といったKを下げる治療をします。

Hgb:ヘモグロビン値

Hgbが低ければ貧血もしくは出血している可能性・血液疾患・薬の影響も疑われます。

出血の原因となり得る、抗血栓薬や抗凝固薬など服用していないか確認する必要があります。薬の副作用で汎血球減少の原因となる薬がないか、添付文書で確認しましょう。

逆にHgbが高値・急激に上昇している場合、血液疾患・脱水や薬剤の影響(鉄剤・HIF-PH阻害薬など)がないか確認する必要があります。

WBC(white blood cell):白血球

白血球は細菌感染を起こしている場合上昇しますので、感染症の鑑別する際によくみる検査です。ただし高齢者ですと感染しても免疫機構が反応せずに、低値の場合がありますので、要注意です。

他にも、心筋梗塞・組織損傷・炎症・リウマチ熱・血液疾患・ストレスなどで白血球の上昇がみられます。上昇する代表的な薬に、ステロイドがあります。

一方低値の場合は、再生不良性貧血・急性白血病・ウイルス感染(麻疹・風疹・水痘など)や一般的な薬の影響もあります。

化学療法の治療中の方も低値で出るため、化学療法後にWBCが下がりすぎていないか確認します。下がりすぎている場合、G-CSF製剤を投与し、感染症にかからないよう予防する必要があります。

CRP(C-reactive protein):シーアールピー

CRPは炎症反応と言われ、急性炎症または組織破壊どの程度なのか推定できます。WBCよりも遅れて上昇してきます。

ただし、感染症だけでなく癌や腫瘍といった他の炎症の場合にも上昇することもあるため、鑑別する必要があります。

PLT(Platelet):血小板

PLTが低値になっていると出血が止まらなくなる可能性があるので、注意が必要です。

原因としては、特発性血小板減少性紫斑病・続発性血小板減少性紫斑病で見られます。

続発性の場合は薬の影響が考えられ、代表的なものに抗腫瘍薬・サイアザイド系利尿薬・免疫抑制剤・ヘパリンなどです。

BUN:尿素窒素

BUNは血液中の尿素に含まれる窒素分を表しています。窒素はアンモニアとCO2から肝臓で合成されます。

BUNが高値の場合高タンパク食・脱水・腎不全・心疾患・肝臓疾患・出血の可能性があります。BUNが高値になる代表的な薬は、抗菌薬・利尿薬・NSAIDs・シスプラチン・シクロスポリン・輸血・アミノ酸製剤などが考えられます。

一方、低値の場合は、肝不全・妊娠・栄養失調・輸液過多・飢餓・尿崩症などが挙げられます。

こちらもよく使いますので、覚えておきましょう!

Ca:カルシウム値

Ca値も重要です。Ca値が高値になると悪心・嘔吐・腹痛・筋力低下などの症状が出現することがあります。

アルブミンの値が低いと正確なCa値が分からなくなるため、Ca値を補正します

補正Ca値が10以上であれば、高値ということになります。

Ca上昇の原因となるビタミンD製剤やCa製剤の減量もしくは中止など検討する必要があります。

PT-INR:アイ・エヌ・アール

ワーファリンの効果の判定に見られます。

非弁膜性心房細動の場合:ワーファリンの至適凝固レベル

70歳未満: INR 2.0 ~ 3.0

70歳以上:INR 1.6 ~ 2.6    

※心房細動治療(薬物)ガイドライン参照

INRが伸びているとはこの範囲を超えてしまっているということになります。

その場合、ケイツー注の投与をしてINR基準内に戻します。(リバース)

逆になかなかINRが上昇しない場合は、薬の影響(ビタミンK製剤・栄養剤)がないか確認しましょう。

                             

まとめ

いかがだったでしょうか。簡単だったかもしれませんが、病院薬剤師として働く際に日常的に見ている検査値ですので、必ず押さえておくようにしましょう。

これからも病院薬剤師として、一緒に頑張っていきましょう!

参考文献:薬剤師レジデントマニュアル・薬剤師のための臨床検査の知識

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ABOUT ME
くすりすこ
30代の薬剤師ママです。2児の母。 総合病院で勤務した後、中小病院に転職。 育休2回を経験。病院薬剤師として働いています。 働く病院薬剤師の日常や子育てについて書いています。
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